草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

睡眠中の人体に潜入! 働き者の臓器たちの知られざる姿に迫る『眠っている間に体の中で何が起こっているのか』西多昌規 著

眠っている間に体の中で何が起こっているのか

西多昌規 著

■ 睡眠中の人体に潜入! そのとき「胃」や「肺」や「骨」はどうなっているか

 みなさんは、毎日の睡眠でしっかり休養できていると感じていますか? もしかすると、「寝ても疲れがとれない」「眠りが浅い」「夜中にしょっちゅう目覚める」など、睡眠に関する悩みを抱えている方も多いかもしれません。
世界的に見ても、日本人の睡眠時間がなかなか増えないという問題があります。わたしたち日本人には、睡眠より仕事や趣味のほうを優先させてしまう傾向が染みついている可能性があります。
 そこで本書は、「ちゃんと寝ること」がいかに人間の体にとって大切なのかを、睡眠中の人体内部の様々な臓器の動きや変化を通じて明らかにしようとするものです。たとえばいちばん身近な臓器である「胃」が、眠っている間にどうなっているか、ご存じでしょうか。あるいは、睡眠中の「筋肉」は、どのような活動をしているか、聞いたことはあるでしょうか?
 実は、眠っている間の体の動きや変化を、臓器別に解説した本はこれまでありません。このテーマは必要性が大きいにもかかわらず、きちんとした本がないことが、著者が本書を執筆する動機であり、本書の大きな特徴です。

■ 眠っている間に修復される私たちの体

 本書では、睡眠の質が悪くなったり睡眠時間が不足することで、風邪を引きやすくなったり、血圧が高くなり、太りやすく、筋量が減って骨折しやすくなる、さらには皮膚にダメージがあり見た目の老化が進むことなどを科学的に明らかにしています。一方で、「夜にちゃんと寝る」だけで、ホルモンバランスが整い、免疫力は上がり、脳が冴え、若返るメカニズムについても詳述しています。
 人間であれば、どんな人でも必ず毎日眠らなければなりません。本書を読めば、人生の時間において「睡眠の時間」が、実に大事なものであるかを理解できるでしょう。逆に寝不足がいかに体に悪いかということを痛感します。
 本書が広く読まれることにより、「寝る間を惜しんで○○をする」という間違ったタイパ意識が消え、「夜はきちんと寝よう」と考え直す人が増えると思われます。日本人の心身の健康にとっても非常に有益な一冊です。ぜひ多くの方に読んでいただければと願っております。

(担当/吉田)

 

スタンフォード大学教授・スタンフォード睡眠生体リズム研究所所長
西野精治氏 推薦!
「睡眠は豊かな生活において最も重要で基本的な生理現象です。睡眠の使命について明確に解き明かした書籍に初めて出会いました」

 

目次

・第1章 睡眠・生体リズムの基礎 
睡眠段階 ノンレム睡眠とレム睡眠 
睡眠はどこから生まれるのか? 睡眠中枢の話 
覚醒を制御するオレキシン 覚醒と睡眠のコントローラー 
朝の光を視交叉上核がキャッチして、交感神経を刺激する
眠りのホルモン? 謎の多いメラトニン
深部体温でわかる生体リズム
徹夜明けなのに眠りが浅いのはなぜ? 
睡眠中に活動が低くなる交感神経、活発になる副交感神経
コラム 睡眠中の寝返りは少ないほうがいい?
・第2章 眠っている間に内分泌系では何が起こっているのか 
内分泌系にとって睡眠はなぜ重要なのか
内分泌系の基礎 ホルモンとは何か
ホルモンの24時間リズムは多種多様
成長ホルモン 「寝る子は育つ」は正しい?
コルチゾル 夜中に喘息発作が多いわけ
甲状腺ホルモン 寝不足でギラギラしてくるわけ
性ホルモン 不妊や月経前症候群は夜のホルモンが不安定になるため
ブドウ糖代謝 睡眠中に血糖値は上がる?
食欲と睡眠 睡眠不足だと太りやすくなる
ミネラル調節 寝不足は脱水になりやすい
・第3章 眠っている間に免疫系では何が起こっているのか 
なぜ風邪をひくと眠くなるのか 
免疫とは? 病原体から身を守る免疫、そして睡眠
睡眠不足だと風邪をひきやすくなるのは本当?
風邪や肺炎、膀胱炎 炎症反応って何? 急性炎症について
細胞間のSNS? サイトカイン
睡眠を生じさせるサイトカイン
風邪をひくと眠くなるが、睡眠は悪化する
睡眠不足によって機能低下するサイトカイン
がんやうつ病も炎症から? 慢性炎症の怖さと睡眠不足
コラム 炎症と鎮痛薬、睡眠物質プロスタグランジン
・第4章 眠っている間に消化器系では何が起こっているのか 
寝る前に食べるとなぜ悪いのか
睡眠中の胃腸の動きと自律神経 朝にお腹が減るのはなぜ?
睡眠中は、胃に入った物が逆流しやすい
睡眠前半での胃の危機的状況
睡眠中も休まないはたらき者の小腸
大腸、肛門と睡眠 眠っている間に便が出ない精巧なメカニズム
睡眠中に胸焼けが起こる逆流性食道炎 睡眠時無呼吸症候群との意外な関係
過敏性腸症候群と睡眠障害との悪いサイクル
頑固な便秘「慢性便秘症」と睡眠 女性は寝すぎると便秘になりやすい
・第5章 眠っている間に呼吸器系では何が起こっているのか 
眠っている間の呼吸は不安定
眠っている間の呼吸筋の力は低下する
低酸素への反応も、睡眠中に鈍くなる
息苦しいと目覚めてしまうわけ
睡眠中はのどの空気の通り道がつぶれやすくなる
睡眠中は、肺での換気効率も悪くなる
睡眠時無呼吸症候群 頻度、症状、合併症
無呼吸はどうして人体に悪いのか① 交感神経系の過剰活動
無呼吸はどうして人体に悪いのか ② 低酸素状態
・第6章 眠っている間に循環器系では何が起こっているのか 
日本人の3分の1が高血圧
慢性的な睡眠不足では、血圧は上昇する
ノンレム睡眠中に血圧が下がるメカニズム
レム睡眠中に血圧が不安定になるわけ
睡眠中も血圧が下がらない危険なノン・ディッパーとは
オレキシン 隠れた睡眠中の血圧ペースメーカー
・第7章 眠っている間に脳神経系では何が起こっているのか 
眠っている間の記憶の整理と忘却
ノンレム睡眠中に素早く、かつゆっくり「振動」する脳
ノンレム睡眠中に「洗浄」される脳
レム睡眠中に血流が増加する脳
レム睡眠で脳は大人でも成長する? 
睡眠中に活動を停止するドーパミンやセロトニン
夢を見る脳
睡眠不足で老化する脳
・第8章 眠っている間に筋骨格系では何が起こっているのか
リカバリーとしての睡眠① 筋トレと睡眠
睡眠中に強化される筋肉
睡眠不足で壊れる筋肉
リカバリーとしての睡眠② 骨折と睡眠
睡眠で生まれ変わる骨
睡眠不足で壊れる骨
炎症は骨も筋肉も弱めてしまう
骨を強化する意外な立役者 レプチンと自律神経
・第9章 眠っている間に泌尿器系では何が起こっているのか 
睡眠中にトイレの回数が減る理由
子どもの夜尿症の原因は?
歳をとると困る夜間頻尿の3つの原因
睡眠不足で尿量が増える?
睡眠時無呼吸症候群と夜間頻尿の深い関係
妊娠中の夜間頻尿 がまんのし過ぎは、尿路感染症になりやすい
・第10章 眠っている間に皮膚では何が起こっているのか 
美肌には「ゴールデンタイム」だけで十分なのか
皮膚の構造とターンオーバー
成長ホルモンは皮膚のどこにはたらくのか
たるみ、シワ、乾燥、シミ……睡眠不足による皮膚ダメージ
寝不足の皮膚の血流低下と目の下の「クマ」
皮膚の酸化ストレスと睡眠
朝起きたら顔がむくむ、寝相が悪いとシワが増える
寝不足による見た目の劣化で社会から孤立する

 

著者紹介

西多昌規(にしだ・まさき)

早稲田大学教授、早稲田大学睡眠研究所所長、精神科医。1970年石川県生まれ、東京医科歯科大学卒業。国立精神・神経医療研究センター病院、ハーバード大学客員研究員、自治医科大学講師、スタンフォード大学客員講師などを経て、早稲田大学スポーツ科学学術院・教授。日本精神神経学会精神科専門医、日本睡眠学会総合専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクターなど。専門は睡眠医学、精神医学、身体運動とメンタルヘルス、アスリートのメンタルケア。著書に『自分の「異常性」に気づかない人たち』(草思社)、『休む技術』(大和書房)ほか多数。

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