草思社のblog

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「トレーニングのためのトレーニング」からどう脱却するか? ウェイトトレーニングの常識がガラリと変わる最新理論!『VBT トレーニングの効果は「速度」が決める』長谷川裕著

VBT トレーニングの効果は「速度」が決める

長谷川裕 著

 本書のタイトルであるVBT(Velocity Based Training)とは、「速度=Velocity」を基準におこなうトレーニングという意味です。従来のウェイトトレーニングは最大挙上重量(全力で1回だけ持ちあげられる重さ)の数値にもとづいて「〇㎏×▽セット」とメニューを設定していたのですが、この「古典的トレーニング法」の限界が明らかになるにつれ、急速に注目され始めているトレーニング理論が「挙上速度」を基準とするVBTなのです。
 VBTは、各々のトレーニング課題やコンディションに合わせてウェイトトレーニングの強度と量を自動的に調整し、確実に目標達成へと導くトレーニング方法で、挙上速度のモニタリングによって「疲労させるだけの無駄なトレーニング」を省くことができるという大きなメリットを有しています。「トレーニングのためのトレーニング」を脱却するためには絶対に押さえておかなくてはいけないトレーニング理論なのです。
 著者はスポーツ科学の研究者で、とくにアスリートのパフォーマンス分析の研究をメインに幅広く活動してきました。教鞭をとっている龍谷大学で学生の指導にあたるだけではなく、名古屋グランパスエイト(コンディショニングアドバイザー 、2004~08年)、本田技研工業ラグビー部Honda Heat(スポーツサイエンティスト、2008~2011)といったトップチームでのキャリアもあります。本書は、理論と実践の両輪でトレーニングを考察しつづけてきた著者の集大成ともいえる一冊です。そもそも、なぜ今VBTなのか、VBTにはどのようなトレーニング効果があるのか、VBTをどのように実践するのかといった中心的な内容に加えて、VBTを理解するうえで欠かせないバイオメカニクスや運動生理学についてもわかりやすく解説することで、トレーニング全般についても理解が深まる一冊になっています。スポーツの現場で指導にあたっているトレーナーやコーチの方だけでなく、一般のトレーニング愛好者にも役に立つ「トレーニングサイエンスの参考書」といえます。

◆本書「はじめに」より抜粋
 日本のスポーツ競技力はかつてに比べれば多くの種目で世界と同等に戦えるレベルにまで向上し、少なくない種目でトップレベルに手が届くようになってきました。ワールドカップで世界の強豪と同等に渡り合えるようになったラグビーしかり、世界のトップに上り詰めた女子アイススケートしかりです。
 こうした背景の1つには、最新のトレーニング科学の成果に基づいて処方された緻密なプログラムを、客観的なデータに基づいて徹底的に効率を追求して取り組まれているウェイトトレーニングがあります。それが本書で紹介するVBTです。(中略)
 しかし国内には、まだまだこうしたウェイトトレーニング法の存在に気づかず、何キロのウェイトを何回持ち上げればよいかということだけを追求し、重ければ重いほどいい、持ち上げる回数は多ければ多いほどいい、ウェイトトレーニングで疲れて少々身体が重くなるのは仕方がないことだ、強くなるためにはそれに打ち勝って追い込まなければ……と、涙ぐましい努力をしている選手やチームがまだまだ存在します。そしてトレーニング科学を学んで資格を取得したはずのトレーニング指導者の中にも、ウェイトトレーニングにおける挙上速度のデータを用いて行うVBTについて知らない、聞いたことはあるけれども十分理解できていないため導入に至っていないという人がまだまだ多数おられます。
 本書は、こういう選手や指導者に最先端のトレーニング科学の成果であるVBTというウェイトトレーニング法を知っていただき、その科学的根拠から理解を深めていただいて、スポーツパフォーマンスと生活の質やレクリエーションのレベルをさらに向上させるという目的のために自信を持ってVBTを導入していただけるようになることを目的としています。
 すでにVBTを導入している選手や指導者には、VBTに関するより深い理解と最新の研究成果を踏まえさらに進んだ方法をご自身で工夫していただくためのヒントを提供できればと考えています。

(担当/碇)

著者紹介

長谷川裕(はせがわ・ひろし)

龍谷大学教授。スポーツサイエンス、とくにパフォーマンス分析の研究に注力。1956年京都府出身。79年筑波大学体育専門学群卒業。81年広島大学大学院教育学研究科博士課程前期修了。龍谷大学サッカー部部長・監督(88年~)、ペンシルベニア州立大学客員研究員兼男子サッカチームコンディショニングコーチ(97~98年)、名古屋グランパスエイトコンディショニングアドバイザー(2004~08年)、本田技研工業ラグビー部Honda Heat スポーツサイエンティスト(2008~2011)。スポーツ科学計測テクノロジー・S&C Corporation代表。著書に『IOC hand book-strength training for athletes-』(John Wiley & Sons)『アスリートとして知っておきたいスポーツ動作と身体のしくみ』『サッカー選手として知っておきたい身体のしくみ・動作・トレーニング』(ともにナツメ社)、訳書に『レジスタンストレーニングのプログラムデザイン』(ブックハウス・エイチディ)『爆発的パワー養成プライオメトリクス』『パフォーマンス向上に役立つサッカー選手の体力測定と評価』(ともに大修館書店)等がある。日本トレーニング指導者協会名誉会長。 JATI認定特別上級トレーニング指導者(JATI-SATI)。

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